長く続く感情と誠実をあらわす花。塊根には強い耐性がありどんなに厳しい環境でも耐え得ることから、シクラメンは深い愛を意味する花と言われています。ヨーロッパでは、誠実な愛の誓いとしてシクラメンの花を贈ります。
しかし中世では、恋人よりもむしろ子供や若い女性への贈り物として愛されていました。というのも、受粉して結実したシクラメンの花梗は、まるで我が子を守る母親のようにくるくると螺旋を描きながらその実を抱きかかえます。このことから母性愛のシンボルとされていたのです。
後に、長く続く愛のシンボルとして誠実さを示す花と称えられ現在に至ります。
日本では、特にシクラメンはこよなく人々に愛されています。
かの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチはオダマキとシクラメンを非常に愛していたということをご存知ですか? 自身の手稿の余白をシクラメンで飾っていたそうです。
17世紀のフランドル絵画にはキリスト、キリストを取り巻く天使と一緒にシクラメンが描かれています。
ルイ16世は花々の中でシクラメンを大変好み、ベルサイユ宮殿の居間をシクラメンで飾っていました。
ジャン=ジャック・ルソーは『孤独な散歩者の夢想』の中で、アルプスで見つけた原種シクラメンについて語っています。
18世紀には沈黙を守っていましたが、グルネル(現パリ第15区)でのシクラメン栽培をきっかけに19世紀にはフランスで再び大ブームが起こりました。
アールヌーボーを代表するフランスのガラス工芸家エミール・ガレと、その親しいナンシーの芸術家達はシクラメンをモチーフにした作品を数々発表しました。
シクラメンの流行はやがて日本にも伝わり、先に西洋から渡っていたバラ、カーネーションと共に、アジアで一番の西洋化したこの国で大変親しまれるようになりました。
ロベール・デスノス(フランスの詩人・故1945年)の詩 :
« Le cyclamen de Clamecy,
Qui regrette tant la Savoie,
Clame par-ci, clame par-là,
De toute sa voix.
Mais il est sur la bonne voie,
Le cyclamen reverra la Savoie ».